ASAHIKAWA WBC(up2016.03)

所属

旭川医科大学 寄生虫学講座

 

氏名

Akira  Ito

客員教員(客員教授) 伊藤 亮

研究テーマ

エキノコックス症、嚢虫症に対する免疫診断法の研究と分子疫学研究

研究内容(概要)                

致死的なエキノコックス症(国内では北海道の地方病である多包虫症と全世界で蔓延している単包虫症)と脳嚢虫症が重要。これらの難治性寄生虫疾患に対して開発された迅速免疫診断キットが市販されている。同時に、これらの寄生虫遺伝子診断法を開発し、遺伝子疫学調査に活用している。

関連キーワード

エキノコックス症(多包虫症、単包虫症)、脳嚢虫症、血清診断法、Em18抗原、治癒判定検査法、迅速診断キット開発と臨床応用、遺伝子診断、遺伝子疫学調査

主な研究内容もしくは代表的な過去の事例研究

 <研究の目的>

  北海道の地方病であるエキノコックス症(多包虫症、alveolar echinococcosis)を中心とする基礎から疫学までの総合的な研究体制の構築と世界への発信を目指す。

 

1.血清診断法の研究

1)多包虫症に関する血清診断法の研究:「エキノコックス症(多包虫症、単包虫症)の鑑別用診断キット開発と臨床応用」が文科省の特別予算、北海道内3大学(北大、札幌医大、旭川医大)間の橋渡し研究(2007年から2011年度)として展開された。

Em18の有用性に関する最初の論文をメルボルン大学との、第2報を中国、重慶医科大学との共同研究成果として1993年に国際専門誌に発表した。その後、米国疾病情報対策センター(CDC)を含む全世界のエキノコックス症研究機関の責任者達と共同研究を展開し、Em18は現在世界最高水準の診断抗原であると客観評価されている。

本学、寄生虫学講座の血清診断法が世界最高水準と評価されるに至った研究成果はEm18抗原を遺伝子組み換え蛋白質(RecEm18)として産生し、Em18抗原についての分子レベルでの評価解析を実施したことによる。Em18はエキノコックスの活性病巣を持つ患者のほとんど100%近くを確実に検出できる抗原であり、進行期以降の活動性病巣を有する多包虫症の術前診断抗原として、また治癒判定抗原としても抜群に優れている。RecEm18抗原を用いた迅速イムノクロマトキット(ADAMU-AE,下図)が20133月から市販されている。特別な経験なしに誰でも、どこでも、いつでも血液1滴で520分で結果が出る。北海道をはじめ全国で多包虫症が疑われる症例に対して積極的な利用が推奨される。最近話題になることが多い動物園の類人猿(ゴリラ、チンパンジー、アカゲザル)の感染個体識別にも活用できることがスイスのチューリッヒ大学で確認されている。

 

2)単包虫症(cystic echinococcosis)に関する血清診断法の研究:

Antigen B8/1 (AgB8/1)が重要である。この遺伝子組み換え抗原(RecAgB8/1)を用いる迅速診断キットも北海道内3大学間の橋渡し

研究として開発されている。流行国での利用が期待される。

2010年米国政府CDCから米国における住民検診、確定診断法としてRecEm18-ELISARecAgB-ELISAを採用したい旨の連絡を受けた。

エキノコックス症(多包虫症)迅速キット

20132月から市販(ICST Co. さいたま)

 

 

 

 

 

 

 

 

 


新鮮血1滴、20分以内に判明

3)脳嚢虫症(neurocysticercosis)に関する血清診断法の研究:

致死的疾患として重要な脳嚢虫症に関しても新しい簡便な抗原精製法、

遺伝子組み換え抗原の産生法を確立した。文科省科学技術戦略推進費(20102012年度)事業として迅速キット開発に取り組み、迅速キットが開発され、市販されている。旭川から世界への国際標準検査法の発信を継続中。(上記キットの製造元:(株)アドテック(宇佐市)、販売元:(株)ICST(さいたま市))

 

2.遺伝子解析と遺伝子診断法の研究全世界に分布しているエキノコックス属条虫、人体寄生テニア属条虫ならびに関連条虫種についてミトコンドリアならびに核遺伝子解析と、流行地での簡便な遺伝子検査法を開発し、致死的寄生虫疾患であるエキノコックス症、嚢虫症に関する地球規模での分子疫学調査に活用している。

連絡先 総務部研究支援課社会連携係

Tel0166-68-2197

Fax0166-66-0025

E-mailrs-sr.g@asahikawa-med.ac.jp

URL: http://www.asahikawa-med.ac.jp/

相談可能な分野・講演可能なテーマ

・エキノコックス症の世界での流行と問題

・脳嚢虫症の世界での現状と問題点

・北海道で問題になる寄生虫疾患

・食生活にまつわる寄生虫病