ASAHIKAWA WBC(up2016.03)

所属

旭川医科大学 耳鼻咽喉科

頭頸部外科学講座

 

氏名

Akihiro Katada

講師 片田 彰博

研究テーマ

機能的電気刺激による喉頭運動の回復

研究内容(概要)

本研究は、神経の麻痺によって動かなくなった喉頭の筋肉に電気刺激をおこなって失われた喉頭の運動機能を回復させることを目的としている。この新しい治療法の確立には心臓のペースメーカのように体内に長期間の留置が可能な刺激装置の開発が、必要不可欠である。

関連キーワード

喉頭痳痺,機能的電気刺激,発声障害,呼吸障害,埋め込み型電気刺激装置

主な研究内容もしくは代表的な過去の事例研究

喉頭は気道(呼吸における空気の通り道)のなかで外界と肺との中間に位置しており、呼吸、咳やくしゃみなどの気道防反射、嚥下(食べ物を飲み込むこと)、発声など人間が生活の質を保つために多くの役割を担っている重要な臓器である。喉頭の運動は甲状軟骨というフレームの中にある、5種類の内喉頭筋と呼ばれる小さな筋肉の収縮によって制御されている。この筋肉は反回神経と呼ばれる非常に細い神経で支配されているが、この神経は頸や胸の手術や肺、食道、甲状腺、大血管などの病気によって麻痺してしまうことが多い。この神経が麻痺すると、喉頭はうごかなくなってしまい、いろいろな機能障害がおこる。なかでも、呼吸障害や嚥下障害は患者の生命と直結するものであり、また発声障害は人間が言語によるコミュニケ-ションに頼っていることから、日常生活への支障は非常に大きい。しかし喉頭痳痺の場合、喉頭の形や筋肉そのものが障害を受けているわけではないので、なんらかの方法で筋肉を適当なタイミングで収縮させ喉頭の運動が誘発できれば、失われた喉頭の機能をかいふくさせることが理論的には可能である。古くから筋肉は支配する神経が麻痺していても、電気刺激を直接加えると収縮して運動を引き起こすことができる。我々はこの筋肉の性質に注目し、心臓のペースメーカーのように埋め込み型の電気刺激装置をつかって、麻痺している喉頭の筋肉を直接電気刺激することにより、喉頭の呼吸運動や発声運動を回復させる新しい治療法の開発に取り組んでいる。

 これまでの動物実験の結果から、従来の埋め込み型電気刺激装置を改良することにより、電気刺激によって麻痺している喉頭に運動を誘発できること、さらにその運動によって呼吸機能や発声機能が回復することを確認している。しかし、本研究の結果を新しい治療法として人体に応用するには、喉頭専用の刺激装置や電極の開発が不可欠であり、この問題がクリアされなければこの技術の治療への応用は非常に難しい段階にあるのが現状である。

 

連絡先 総務部研究支援課社会連携係

Tel0166-68-2197

Fax0166-66-0025

E-mail:rs-sr.g@asahikawa-med.ac.jp

URL: http://www.asahikawa-med.ac.jp/

 

相談可能な分野・講演可能なテーマ

・発声運動の中枢神経機構

・機能的電気刺激による筋萎縮抑制効果

・発声障害の治療

・嚥下障害の治療