ASAHIKAWA WBC(up2016.03)

所属

旭川医科大学 健康科学講座

 

氏名

Yoshihiko Nakagi

助教 中木 良彦

研究テーマ

飲食品中に含まれるホルムアルデヒドの生体影響

研究内容(概要)

マウスにホルムアルデヒド添加飼料を50日間経口投与し、投与終了後、腸内細菌数、エンドトキシン濃度、およびアレルギーやクラススイッチ機構に関連するサイトカイン量を測定し、粘膜免疫と全身免疫の変容について解析を行う。

関連キーワード

ホルムアルデヒド,腸内細菌,免疫毒性

 

 

主な研究内容もしくは代表的な過去の事例研究

ホルムアルデヒド含有食品の腸内免疫機構への影響を調査するため、B6C3F1雌性マウスをホルムアルデヒド曝露群、およびコントロール群各8匹に分け、曝露群には100mg/kg/dayの曝露量になるように調整したホルムアルデヒド添加飼料を、コントロール群には通常飼料(ホルムアルデヒド無添加)を50日間与えた。曝露期間終了後、新鮮糞便中のIgA量を測定し、麻酔による屠殺を行い、腸内細菌数をDHL寒天培地およびBL寒天培地を用いて計測した。また、全身免疫系の評価に血液中IgA量、脾細胞を用いたリンパ球subpopulationの解析、消化管粘膜免疫系の評価にPeyer板リンパ球のsubpopulationの解析、Peyer板細胞培養上清中のIgA、およびサイトカイン産生量についてELISA法を用いて測定した。また、粘膜免疫機構に影響を与えるエンドトキシンに小腸および大腸をエンドトキシンフリー水で洗浄し、洗浄液中のエンドトキシン量を測定した。

ホルムアルデヒド曝露群では、下部消化管の大腸菌数、および嫌気性菌数が有意に減少した(p<0.05、およびp<0.01)。消化管のPeyer板リンパ球のsubpopulation解析では、CD8陽性リンパ球が曝露群で有意に減少し(p<0.05)、CD4/CD8比が曝露群で有意に増加した(p<0.05)。消化管免疫の中心的な役割を担うIgA産生・分泌量は、コントロール群に比較して曝露群の血清中で有意に低下(p<0.001)し、糞便中においても減少傾向(p<0.1)を示した。Peyer板においては有意差を認めなかった。消化管洗浄液中のエンドトキシン濃度は、小腸では両群間に差を認めなかった(対照群:0.93±0.88、曝露群:0.56±0.77)。大腸では曝露群で対照群に比較してエンドトキシン濃度が有意に低下した(p<0.01)。

一方で、カナマイシンを経口投与し、意図的に腸内細菌を減少させたポジティブコントロール群を作成し、血清中のIgA等を測定したところホルムアルデヒド曝露群と同様の結果が得られ、上記の免疫機構への影響が、ホルムアルデヒドの直接の影響ではなく、腸内細菌数の減少によるものであることが明らかとなった。

以上のように我々が意図しない高濃度のホルムアルデヒドを含有する食品の摂取を想定した動物実験において粘膜免疫系への影響が示唆されたことから、早期の食品中のホルムアルデヒド含有量に対する安全性の検討が望まれる。また、ホルムアルデヒドの他にも腸内細菌が減少する物質の経口曝露においても免疫系への変容の可能性が示された。

 

連絡先 総務部研究支援課社会連携係

Tel0166-68-2197

Fax0166-66-0025

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URL: http://www.asahikawa-med.ac.jp/ 

相談可能な分野・講演可能なテーマ

・ホルムアルデヒドの経口毒性