ASAHIKAWA WBC(up2016.03)

所属

旭川医科大学 看護学講座

 

氏名

Yoko Okada

教授 岡田 洋子 

研究テーマ

小児の死の概念発達、

小中学生を対象としたDeathEducation

研究内容(概要)

小児看護経験において小児の死に多く関わったが、その反省が本研究の出発点である。小児のターミナルケアおよび死の概念教育を考える第一歩として、死に対する概念の発達と関連要因を明らかにし、小中学生を中心に講演や意識調査などを行った。今後のDeath-Education(死の準備教育)の浸透と発展を目指す研究である。

関連キーワード

Death Education,死の概念,教育,子ども,小児,看護,小児看護学

主な研究内容もしくは代表的な過去の事例研究

 

研究テーマの背景…今は亡き子どもたちからの課題

私が小児科病棟に勤務した頃は、基準看護という看護体制であった。後に大学で学んだ折、死を迎える小児患者の「心の痛み」を理解できずにいたことに気づき、その「反省の念」がこの研究の出発点である。死を迎える小児のターミナルケア及び現代を生きる子ども達へのDeath Educationを考える第一歩として、死の概念発達とその関連要因を明らかにする目的で調査を行った。その後、明らかとなってきた小児の死の概念発達と関連要因について、教育の現場へ、小児看護への応用、さらには現代社会における子育てへの問題提起、子ども達から大人が学び得ること等について、探求している。

 

認知的発達と死の概念発達(PiagetJ)とは

1980年代以降のアメリカでは子どもへの効果的介入を図るために従来の年齢から認知的発達理論が医療に応用されるようになった。認知的発達理論は、知識の増大ではなく思考構造の変化の過程(同化・調整・適応状態の3段階)を重視した認知発達理論であり、体験(知識だけでなく感性)の重要性が根底にある。死の概念形成も同様で、現代社会の中で子ども達がどのような体験をしているかが重要となる。

・同化=外界からの物事の取り入れによる自己行動シェマやイメージの形成

・調整=外界に応じた自己行動シェマやイメージの変更・修正

・適応状態=同化と調整の均衡の取れた状態を指す

米国では30年以上前からDeath Educationが学校教育の中に組まれている。日本においてもDeath Educationが学校教育の中で、さらに入院体験も小児の成長・発達過程における大切な社会経験の場であると考えるならば、入院中に遭遇する自他の死別体験をどのように経験させるか、この研究の発端にもなった小児看護の抱えるべき課題であると感じる。

入院している小児に限らず、現代社会の子どもは、外界からどのような死のイメージ・概念を取り込み、また外界に応じて死のイメージ・概念を変えているのであろうか?ヴァーチャルな体験と実体験、そのバランスはどうなっているのであろうか?というあらたな疑問・課題が生まれた。

 

Death Educationの意義、子どもは大人と社会を映し出す鏡

「命」「生きること」をテーマに、小学校低学年から中学生を対象にDeath Educationを実施し、その結果を分析・評価した。各年代に合った教材を検討・作成し使用した。例えば小学校低学年には絵本・紙芝居を用いてペットとの死別、高学年には不治の病と闘いながら学校生活・友達・人の役にたてることを大切に生きた同年代のドキュメンタリーVTRを編集し、また中学生には、先天性疾患で生まれた時から障がいを持ち、入退院の経験、そこで入院仲間の死を見送ってきた少年による講演など。

Death Educationは、上述したように年齢及び認知的発達段階を考慮し、対象学年に合った教材を作成・使用し、実施した。実施前に「いのちについて」「生きることについて」「死について」日頃思うことを、実施後は同じく「いのちについて」「生きることについて」「死について」今思うことを、書いて提出ねがった。分析は提出レポートを逐語録とし質的研究方法を用い帰納的・記述的に分析を試み、前後の特徴・変化を検討した。

これらを通じて子ども達から学んだことは、現代の子どもたちの目に多く飛び込んでくるものがヴァーチャルな世界に偏っており、こういった生活体験の欠如・偏り・アンバランスさが認知的発達における概念形成に影響している例も少なくないということである。そのひとつが、犯罪の低年齢化や「死ね・殺す」などというネガティブな言葉を乱用するなどの行為に見られる。これは現代の子どもが「生きたくても生きられない存在との出会い」「命の大切さを実感する体験」「幸せな自己を発見する機会」などが著しく欠如し日常生活であることが推測される。しかしながら、本研究の調査を通じてこれらの機会を与えられた子ども達は、何が大切なことかを感じ、自己の生き方を考える(考え直す)力を有していることがわかった。このことからもDeath Educationの意義・必要性を図ることができる。

連絡先 総務部研究支援課社会連携係

Tel0166-68-2197

Fax0166-66-0025

E-mail:sho-kenkyu@jimu.asahikawa-med.ac.jp

URL: http://www.asahikawa-med.ac.jp/

 

相談可能な分野・講演可能なテーマ

Death Educationに関わる調査や講演など

・小児看護学について